瓦の気になる「黒ずみ」「割れ」どうしたらいいの?
愛媛県の皆さんこんにちは。街の屋根やさん西条新居浜店の丹 善寛です。
当店では愛媛県東予、中予地区を中心としたお客様から屋根のお困りごとに関する様々なお問い合わせを頂戴します。その中でも「菊間瓦」というブランド瓦がある愛媛県では瓦文化が強く、瓦屋根に関するお問合せが多くあります。
こちらのページではお客様が気になる「瓦の症状」から『瓦の黒ずみ』と『瓦の剥がれるような割れ(凍害)』。この二つのの原因と、実際に行う修理方法をご紹介させていただきます。
拙い文章ですが皆様の瓦屋根への不安を少しでも解消できる手助けになれば幸いです。
「瓦の黒ずみ」これって大丈夫?
お客様からよく「瓦が黒くなっとんやけど大丈夫やろか?」というお問合せをいただきます。
この症状は「菊間瓦」をはじめとした、「いぶし瓦」に見られる症状です。
結論から先に書かせていただくと瓦の変色、黒ずみに関しては何ら問題ありません。
いぶし瓦特有の表面の塗膜が剥がれているだけなので防水機能としては、ほとんど変わりないので安心して頂いて大丈夫です。
「いぶし瓦」ってどういう瓦?
ここでいう陶器瓦(=焼き物の瓦
)
は大きく2種類に分けられると思います。
①
粘土を
瓦の形に成形した素地に釉薬(ゆうやく
)
をかけて焼かれたもの
=
釉薬瓦
(ゆうやくがわら
)。②
素地に
釉薬をかけずに焼いた瓦=
無釉瓦(むゆうがわら
)。
そして「いぶし瓦」は素地を
焼い
た後、密閉状態でプロパンガスなどを使って「燻す」ことによって瓦表面に炭素の被膜を形成させた瓦で、釉薬を使用していない無釉瓦に分類されます。上の写真は三州産のいぶし瓦と釉薬瓦を並べて比較したものですが、色味が釉薬瓦の方が濃いのと切った断面がいぶし瓦の場合、中まで色がついています。
私は屋根やさんになるまで恥ずかしくも
「瓦は焼くと自然に銀色になるもんだ」と思っていました。しかし実際は
焼いただけの素焼きの状態
ではオレンジ色なんですよね。しかし「いぶし瓦」は「燻す
」工程のなかで中まで色が付くんですよね。不思議なもんです。
「いぶし瓦」はどうして黒くなるの?黒くなったらどうすればいいの?
さて本題ですが「いぶし瓦」はどうして黒くなってしまうんでしょう?
「いぶし瓦」の美しく輝く銀色の正体は「燻す」工程で出来る
炭素
被膜です。しかしその炭素被膜は厚みで言うと数ミクロンの極めて薄いもので、素手で触ると皮脂で跡が付くほどにデリケートなものです。そのため年月の経過ととも、どうしても被膜が剥がれてしまい黒ずんできてしまうんですね。
また同じ窯で焼かれた瓦でも、窯の中での位置や火のまわり方で「燻し」のかかり方に個体差が生じる事があり、黒ずみ方にも瓦1枚1枚で個体差が生じてしまうこともあります。(現在はガス窯が主流となり個体差が発生することは大分少なくなりました。)
しかし黒ずんでも瓦としての機能は殆ど変わることはありません。
どうしても気になるから黒くなった瓦だけ差し替えるということは可能です。ただ私個人的には、黒くなった瓦も雰囲気があって素晴らしいと思います。「我が家の味わい」と捉えて屋根の変化を楽しむのも一興かと考えます。
また最近では、通常よりも高い温度で瓦を焼くことで、いぶし銀よりも濃い色に焼き上げ適度に色ムラのある古色風の瓦も焼かれています。いつか私が自身の家を建てる際には是非使ってみたい屋根材のひとつですね。
「瓦の剥離?割れ?」これってどうしてなるの?
お客様からのお問合せでよくあるのは、
「家の瓦がなんか剥離しよるっていうか、なんか割れとんやけど見てもらえるやろか?
」といった事案です。上の写真がその症状なんですが、皆さんはどうしてこうなるかお分かりになりますか?
風で何かがぶつかって割れたとかではなさそうですよね、、、なかなか不安になられる症状かと思います。
こちらの症状の正体は「凍害」の被害で「凍て割れ」です。
比較的温暖な気候の愛媛県だと「凍害」はあまり見慣れない言葉かと思います。しかし、字の如くこちらは瓦が凍って剥離してしまった症状です。正確には瓦の中の水分が凍結と融解を繰り返すことで、内部から割れてしまたんです。
「瓦の中の水分が凍る?」「凍害」ってどういうこと?
ここでポイントになるのが『瓦の吸水率』(瓦がどのくらい水を吸うのか
)です。
焼き物である瓦は
表面に細孔(ごく小さな穴
)
が存在するため多少なりとも水を吸い込みます。
その吸い込んだ水が冬の寒い朝方、凍ったらどうなるでしょう、、、ここで小学生の頃に習った理科を思い出してください。水は凍ると膨張するんです。瓦の中の水も同じく
凍ると膨張します。ということは…
吸水率が高い→瓦に含まれる水分量が多い→
凍ったときの膨張が大きい→膨張に耐えきれず瓦が内部から割れる
これが瓦の凍害「凍て割れ
」の原理です。
実際の「瓦の吸水率」ってどのくらいなの?
「瓦の吸水率」は瓦を製造する際の「焼成温度」と大きく関りがあるので、そちらと一緒にご紹介します。
ちなみにJIS規格にて「釉薬瓦で吸水率12%」「いぶし瓦で吸水率15%」と定められています。
瓦には日本3大瓦と呼ばれる瓦産地があるのでそちらと愛媛の誇る「菊間瓦」を
例に下のグラフをご覧ください。
日本3大瓦
1.石州瓦(島根県)
全国の瓦産地の中でも特に硬く凍害・塩害に強いとされている瓦。独特の赤い瓦が特徴
焼成温度は1200℃を超えて、平均吸水率は驚異の4.88%です。
2.三州瓦(愛知県)
良質な粘土と日本の真ん中に位置する立地にも恵まれ陶器瓦の国内シェアNo,1を誇るのが三州瓦。
1100℃超える燃焼温度で焼かれた瓦は吸水率が6%前後とこちらも凍害に非常に強い瓦。
3.淡路瓦(兵庫県)
「なめ土」と呼ばれる粘土で焼かれた瓦はきめの細かさが特徴。銀色に輝くいぶし瓦で有名。
焼成温度は1050℃前後と他の二つと比べると若干低めで、吸水率は9%前後です。
最後に愛媛で多い菊間瓦も紹介します。
4.菊間瓦(愛媛県今治市)
愛媛の誇るブランド瓦の菊間瓦!小柄なサイズの瓦が特徴で細工物が多く日本建築の屋根を美しく飾ります。
焼成温度は1000℃~1050℃の間くらいでこちらも吸水率は9パーセント台
凍害の被害にあいにくい瓦と言って良いでしょう。
「JIS規格に合格した産地なのに、どうして我が家の瓦は割れたの?」
その理由は、、、
上記の
数値が、瓦がガス窯で焼かれるようなって50年たった現在の数値で瓦メーカの努力の賜物だからです。
もともと瓦は昭和50年前後より以前はダルマ窯という窯で薪や重油を使って焼かれていました。焼成温度も上がりにくく、また窯の中でも焼きムラがありました。同じ窯で焼いた瓦でも、窯の中の位置で一級品、二級品という位があったようです。そのため吸水率も高く凍害が置きやすい瓦が多数出回っていたのが現実です
。
またダルマ窯からガス窯に移行したあとでも、土の配合や焼成時間など日々研究が重ねられて現在の品質にまで引き上げられるまでは、なかなか安定しなかった様です。
「凍害」にあった瓦はどうすればいいの?
「いぶし瓦の変色」の際には特に修理等の必要はありませんでした。
ですが凍害の場合はそうもいきません。
程度にもよりますが築50年以上でありましたら、瓦の葺き替え工事も視野に入れるのが良いかと思います。
通常の「瓦が割れている」だけでしたら、その割れた瓦だけを差し替えてしまえば万事解決です。しかし外的要因ではない、瓦の内部から割れる凍害ではそれでは解決できません。
凍害の原因である吸水率は瓦製造時の問題すので、目に見えて凍害が起きている瓦以外にも、屋根全体で目に見えない裏側や内部に凍害が起こっていると考えるのが自然です。
また50年以上前のお家だと屋根は土葺きでされてるかと思います。釘などで留めずに土の上に並べた瓦屋根は地震や台風に決して強くありません。
以上を踏まえて長年寒さに耐えてお家を守ってきてくれた瓦。「瓦の寿命」と捉えて屋根の葺き替え工事をご検討ください。
「まだ築年数が浅く被害が1部分だけ」といったお家の場合は、その部分だけの瓦の交換で様子を見てみるのも一案かと思います。ガス窯に移ったあとでも、多少なりとも瓦の焼きムラ等はありますので、今回の被害は「その部分だけ運悪く、、、」なんてことも考えられます。
ですので部分的修理を行いその後は「修理箇所以外に凍害が出てないか」を定期的に屋根点検を行うことをおススメさせていただきます。
まとめの前に余談です、、、瓦の吸水率はやっぱり低い方が良いの?
上のグラフなんかで瓦の吸水率と瓦の焼成温度について紹介させて頂きました。
石州瓦の様に高温で焼かれた瓦は硬く凍害・塩害に強いとありましたよね。
では他の瓦産地はどうしてそうしないのか?それにはいくつか理由があります。
まず1つ目の理由は瓦の原料である土の問題です。土は産地により様々な特徴があり同時に
焼ける温度が決まっています。
次に高温で焼くことの難しさがあります。瓦は粘土を成型した後に乾燥して焼き上げるのですが、焼いている間にギュッと引き締まり硬く
縮みます。温度が高いと、
その際に捻じれや亀裂が生まれやすくなります。
それぞれの産地の土で安定した瓦を供給できるギリギリな温度が上のグラフなわけですね。
また吸水率が低いと多少なりともデメリットもあります。
それは吸水率が高い瓦に比べて結露が起こりやすく、結露した水を吸ってくれない。
(吸わないから凍害が起こらないとも言えるんですが、、
)またある程度吸水率がある瓦だと、夏の暑い日、瓦の中の水分が蒸発して気化熱で熱を逃がしてくれますが、その効果が少ないといったところかと思います。
結局、どの瓦が一番っていう事は出来ないんですよね。施工するお家に合わせて適材適所、合った瓦を選ぶことが一番大切です。
まとめ
今回はお客様からよく頂くお問い合わせの中から「瓦の黒ずみ」と「瓦の凍害」の2つをご紹介させて頂きました。屋根はご自身で修理するのが難しく、何か不具合が見つかるとご不安になることが多いかと思います。
しかし何事も理由があり、それに対する正しい対処法があります。
街の屋根やさん西条新居浜店はそんなお客様の抱える「お家の不安、問題」の解決に少しでも手助け出来ればと考えております。
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